フルートを吹くために、歯並びを気にされている方、いらっしゃいませんか?
何を隠そう、私はものすごい出っ歯(上顎前突と言うらしい)でした。
私が歯列矯正をしようかと考え始めたとき、フルーティストの歯列矯正が現実にはどのようなものなのか、調べても調べてもほしい情報がなかなか得られませんでした。
私の記録が、誰かのお役に立てば幸いです。
まずは自己紹介がてら、というのもおかしいのですが、私が歯列矯正に至った経緯をお話しようと思います。
経緯には興味ないよ、矯正中の奏法が気になるよっていう方は、
歯列矯正中の演奏に関する記事を読んでみてください ↓↓↓
そして矯正後、その効果がどうだったのか知りたい!
という方はこちらの記事をどうぞ ↓↓↓
矯正前の私
さて、矯正前の私は、大きな上前歯2本が飛び出ていて、そのために普段ぴったり口を閉じていることが難しいほどで、前歯が出ないように口を閉じるにはちょっと力を入れる必要がありました。
無理して口を閉じると、口の周りがこわばって不自然な表情になってしまうほどでしたので、フルートのアンブシュア(吹くときの口の形)を作るにはそもそも無理があったように思います。
これは母も妹も同じで(完全に遺伝)、力を入れず自然に口を閉じた状態だと、前歯が少しはみ出したままになります。
これじゃあフルートは吹けません。
私は歯も大きいけれど、口も大きく厚いほうなので、その飛び出た前歯の分を、なんとか唇の厚さでカバーして、フルートを吹いていました。
大学時代は違和感なく割と自由自在にフルートを吹いていた記憶がありますが、二度目のフランス留学を機に、すごく気になるようになりました。
(2013~2016年、2019~2021年の二度、パリの音楽院に留学しておりました。)
後から考えると、この二度目の留学の時期、もともと悪かった歯並びがさらに悪化していたようです。
原因はおそらく、横向きに生えていた親知らずが伸びてきたせいで、歯全体が前に押し出され、前歯の並びがさらにくずれたのだと思います。
矯正をするかどうか悩んでいたとき、留学初期からの仲の良い友人から、
「明日香さんしゃべりづらそうになったと思った!前はそんなんじゃなかったもん!」
との証言もいただきました。
この頃、やはり前よりも口を閉じるのが難しくなっており、「パ行」や「マ行」が言いづらく(唇を完全に閉じないと発音できないので)、少し避けて言葉を選んでいました。笑
フランス留学で学んだこと
フランスでは、フルートは特にデタッシェ(舌つき)と音色が重要視されます。
(デタッシェとは「離す」という意味。音と音を離すということで、つまりはタンギング、音の立ち上がりの瞬間のことを指します。)
これがフランス留学で学んだ一番大きなことと言えるかもしれません。
留学前まで北海道で演奏していたときには気にするほどでもなかったのですが、フランスで勉強しているうちに、どうやら私の音は立ち上がりが鮮明ではなく、音色も魅力的ではないことに気付かされました。
割となんでも器用に吹けるほうでしたし、特別音が汚いということはなかったのですが、
「艶のある魅力的な音色」というところには到達していませんでした。
そのことが決定的に明らかになったのが、二度目の留学をして間もない頃、パリ近郊の街で小さなコンクールを受けたときです。
演奏順が1番だった私は、そのコンクールでは思いのまま自由に音楽的に吹けて、何か結果が出せるのでは、と思いました。
こんな発言はすべきじゃありませんが、他の奏者の音楽レベルが高いとは感じませんでした。
ところが、私はそのコンクールで全く評価されなかったのです。
コンクールの伴奏者さんだけがブラボーと言ってくださり、それだけでした。
私のことだけではなく、ダントツで上手だな、と思った子が1位じゃなかったり、私には審査の基準が腑に落ちませんでした。
私は、先生にメールでそのことを報告しました。
上位の人のフルートが音楽的だったとはとても思えなかった、審査の基準がわかりません、
と。
すると先生は次のようなお返事をくださいました。
「明日香ちゃんが言うように、明日香ちゃんは上手く吹けたと思います。
でも、他の方がなぜ評価されたか『100歩譲って』考えてみてください。
フランスではデタッシェと、音がきれいだと、まず評価されます。
これからも、きれいな音ってどれか? いろいろな人を聴き比べて、理想を作ってください。」
そう言われたら、確かに一位だった方は、音楽よりも何よりもデタッシェが特別にきれいだったのです。
これはデタッシェコンクールだったのか!と納得しました(^_^;)
このことは私にとって、とても衝撃的な出来事で、私はこのときからとにかく音色を追求しなければならないという大きな課題ができました。
一度目の留学のときから、「音」が課題だとはぼんやりとわかっていたのですが、このように決定的な事実として突きつけられて、初めて輪郭のある大きな問題として私に突き刺さったのです。
その後、また別の機会に、チェコの作曲家フェルドのソナタを勉強していて、先生に3楽章の冒頭の音型を「もっと短く軽く」と指導されました。
それで、毎日1時間程度はもっと「軽く短く」吹けるように追及して練習をしていたのですが、一向に良くならないどころか、中音域を短く吹くことを突き詰めてみると、音が当たらないことに気づきました。
こんなに音が当たらないとはどういうことなのか、
突き詰めれば突き詰めるほど
「この飛び出ている前歯がアンブシュアの邪魔をしているのでは、、、」
と思うようになりました。
それから、以前にも、コンサートのために伴奏者さんと合わせをしているとき、
(フルートにとても詳しい、長年お世話になっている門下専任の伴奏者さん)
「この曲はそういう音色じゃないんじゃない? 口の穴が開きすぎている気がする」
と言われたこともありました。
そのような大小の出来事が積み重なり、
『前歯がこんなに出ていなければもっとよく吹けるのでは』
という思いでいっぱいになりました。
すごく悩みました。
歯列矯正を始めると、きっとしばらくまともに演奏することはできません。
そして、たくさんの時間とお金をかけて歯列矯正をしたからと言って、全てが改善されるという確証はありません。
アンブシュアは全て作り直すことになると思いましたし、もしかしたら矯正が良いほうに働かず、もう以前のようにフルートを吹くことが出来なくなるかもしれません。
そのようなマイナス面もたくさん考えましたが、
しかし私は、この先一生
「この前歯のせいでこれ以上いい音が出ないのかもしれない」
と思いながら生きていくのは嫌でした。
偶然の出会い
そう思いつめていた頃、
友達の紹介で初めて出会ったお友達(音楽家ではないし、私の演奏も知らない方)に、
「あなた歯列矯正したほうがいいわよ、私もこれからするから、紹介してあげる」
と言われました。
そのお友達は、私のフルートの悩みとは一切関係なく、審美的な問題から私の歯並びを見兼ねて、初対面の私にそのように声をかけたのでした(^^;)
これも何かの運命だったのでしょう。
ちょうどコロナで音楽活動のほとんどが止まっているときだったのもあり、私は迷うことなくパリの歯列矯正院を紹介してもらい、6月の年度末最後のレッスンが終わるとすぐに、通うための準備を始めました。
(フランスでは歯医者と歯列矯正は完全に分業制)
まずは歯列矯正院に行く前に歯のレントゲンを撮っておく必要があるということで、
近所の施設で歯のレントゲンを撮ってもらいました。
(レントゲンはレントゲンでこれもまた分業、病院に行けば撮れるわけではなく、医療画像診断センターというレントゲン専門の施設がある)
それからドキドキしながら歯列矯正院に電話。
(私はフランス語が全く流暢ではないため、電話は困難であるが、なんとか予約を取った)
パリで一番腕のいい歯列矯正だということで、予約が取れたのは3週間後でした。
これでようやく治療が始められそうです。
このようにして、私は歯列矯正に踏み切ることにしたのでした。
その後、気になる治療中の話はこちらからどうぞ(^^
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